べっさんのニュージーランド自転車旅行記

ニュージーランド走ってきました

DAY 31「標高1145m」

3/23  DAY 31  around Molesworth Station

 朝5時に起きて朝飯を食い、その後2時間も2度寝するという悪習慣が染みつきそうで怖い。まあ、この旅もあと5日ほどで終わるのだが。ラジオ体操をして出発。空はどんよりとしていて、今にも雨が落ちてきそうである。相変わらずsandflyの多さは異常で、今日は、自転車で走っていてもついてくる猛者までいて、うっとうしいこと極まりない。風変わりな山の景色も3日目ともなるとただの殺風景な荒野にしか見えないし、gravel roadの新鮮さも失せた。しかし、そんなローテンションでも走らなければならないのだ。途中、野ウサギがいて、運よく写真に収めることができた。これで少し気分が上向き、一気に20kmほどこいで、Molesworth Stationに到着。キャンプサイトなどの横を通り過ぎたところに小屋があって、DOC(60)のレンジャーが1人いた。かなりのおじいさんだ。彼は僕にどこに行くのかと聞く。今日はあと30kmぐらい進むよ、というと、次のキャンプ場は6、70km先だと彼は言うが、少し声がこもっていてその後の話が聞き取りづらい。なんだかゲートが閉まるとかいう話だと文脈でなんとなく把握したが、まあ、あまりよくわからない。彼と別れて先に進むと、行く手のゲートに「この先キャンプ禁止」と書かれている。なるほど、つまりはこういうことか。ここから先でキャンプがしたかったらそのキャンプ場まで行けということか。今日はもうすでに30kmこいできている。ここからさらに60kmもgravel roadを進むことはほぼ不可能である。適当に場所を見つけてテントを張ればいいさ、とあまり深く考えず前に進むことにした。これが、後にちょっとした事件になるのだが、その話はまた後で書くことにしよう。

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野ウサギ

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雲が低く垂れこめる

 ゲートを抜けた途端、道の様子はすっかり変わり、砂利を多く含んだ、足元のゆるい道になった。この道の悪いところは、上り坂でタイヤが空転してしまうことである。登ることが困難になるのはもちろん、バランスを崩す原因ともなるので危険である。案の定、下りで一瞬わだちの間の砂利に車輪が乗っかり、あっと思う間もなく転倒した。ここ2年程自転車に乗っていてこけたことがなかったが、幸いにもけがはなく、自転車も荷物も無傷であった。これは危ないなと、ビンディングを外して進む。かなり標高の高いところに来ているのだろう。山を覆う雲が手に届きそうだ。

 しばらく進んでいるとDOCのピックアップが横に止まった。今度は後ろの髪の毛を長く伸ばした特徴的な髪形のおっさんで、荷物をトラックに載せて次のキャンプ場まで運んでやろうという。ところが強情な僕は、いや、このままいくよと断った。すると彼は、僕が来た方向を指してまだ向こうにもう1人いるから(さっきのおじいさんのことだろう)、たどり着けなかったら、彼に乗せてもらいな、といって走り去ってしまった。この時点で、この地帯のキャンプの規制がかなり厳しいことを自覚し、忠告を聞いておくべきだったかもしれない。

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転倒して、路肩に座り込む

 さらに進み、標高1145mのWards Pass(ウォーズ峠)に入った。ここが一番高いところだという。なるほど厳しい坂道である。タイヤが空回りしてとてもバイクに乗っていられない。自転車を押して坂を上る。途中で、お昼も過ぎていたことに気づき、ラーメンでエネルギーを補給して再出発。何とか登りきった。峠というのはいいものである。視界が急に開け、山の向こう側の新しい景色が一気に飛び込んでくる。あの新鮮さは何回味わっても飽きることはない。標高1000mではなおさらである。峠の向こう側は少し広がっていて、Acheron River(アチェロン川)が流れている。Awatere Riverが東向きに流れていたのに対し、Acheron Riverは西向きに流れ、中間地点を超えたことを実感させる。

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Wards Pass から来た道を見下ろす

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Wards Pass の向こうには Acheron River が流れていた

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つくづく、とんでもないところに来てしまったものだ

ここから先はしばらく川沿いを走るので、アップダウンも穏やかだ。今日は少し距離を稼いでおこうと、サイクルコンピューターの数字が55kmを超えたところで道端の眠れそうなところを探す。よさそうな所を見つけてテントを張り、一服していた時だった。道の遠くから1台のピックアップがやってきて目の前で止まった。いやな予感がする。乗っているのはさっきのおじいさんだ。おじいさんは「ここでキャンプをしてはいけない。20km先のキャンプ場まで連れて行ってあげるから荷物を載せなさい。」という。それなら自分で行く、と言おうとしたが、あたりはかなり暗くなっている。夜のgravel roadは危険だ。まあ、仕方ないと頭を切り替え、自転車を荷台に固定してもらい、トラックに乗り込む。罰金などを払わなければならないか、と覚悟したが、おじいさんは、ここら辺は夜にハンティングをする人がいて、そんなところでテントを張っていて万が一のことがあったらいけないだろう、と僕に言ったきりで、そのようなことをいう気配はない。彼の本業は医者で、この仕事はボランティアなのだという。彼は、キャンプ場に着くまでその他いろんな話を僕にしてくれた。

 20kmの道のりも車ではあっという間である。乗せてもらったお礼をいい、人のいないだだっ広い芝生で1人テントを張る。ここでもsandflyの多さは異常だ。完全に暗くなるのを待ち、飯を食って寝た。

   走行距離: 57km  計: 1687km

 

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峠の向こうにはどんな世界が待っているの だろうか

脚注

(60)Department Of Conservation:NZの自然や歴史的遺産の保護に携わる機関

 

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