べっさんのニュージーランド自転車旅行記

ニュージーランド走ってきました

DAY 8「衝撃の朝とキャンピングカーのお父さん」

2/28  DAY 8  at Te Kaha

 今日は休養日である。釣り三昧なのである。まだ日の上らない5時半に起床し、パンとバナナとリンゴを食べ、朝間詰めにシャローエリアに青物が入っているイメージを描きながら磯に向かう。昨日はまるで生命感がなかったのが一変して、今日はベイトの群れがちらほら浮いていて良い感じである。とはいっても、まさか自分がヒラマサを釣る状況になるとは思っていなかった。タックル(22)も今回の旅のために急いで買ったものだし、青物もツバスやサゴシくらいしか釣ったことがなかった。だから、今日も期待はしていたが、意気込んで釣りに行くというよりは、どちらかというと、まあ、ワンチャンあるかもしれんなあ、という感じで眠いまぶたをこすりながら向かったのである。

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Te Kahaの磯

 しかし、眠気など一気に吹き飛んだ。16cmの大型ペンシルベイト(23)を10投もしただろうか。突如、強烈な引きが襲ってきたのである。すると、なんということだろう。太いバット(24)のロッドはまるでトラウトロッド(25)のようにぶちまがり、強く締めたはずのドラグ(26)はジャーっと音を立てて出ていく一方である。時折ポンピング(27)で寄せられるようなチャンスはあったが、確実に主導権は向こうにあった。また、ポイントが難しいことも状況を悪くした。浅いうえに沈み根(28)が点在し、それらはすべて分厚い海藻で覆われている。釣りの常識として、こういう場所では、魚がヒットしたらラインを極力出さずに少々強引でもごり巻きするのがセオリーである。もちろんそんなことは知っていたが、それ以上に僕の心の準備が足りていなかったのである。数分後、フッとテンションが抜け、魚はばれてしまった。(29)ラインには根ずれの跡が残っていた。

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眼下に広がる磯のほとんどは私有地のため一般人が立ち入ることができない

 その後2時間ほど粘るも、沖で単発のボイル(30)が一回あったきりで、生命反応は消えてしまった。いったんテントに戻り、Te Kaha General Store(テ・カハ・ゼネラルストア)で食料を調達し、日中はエギング(31)やライトショアジギング(32)をして過ごし(何も釣れなかった)、再び夕方に出撃。しかし、何も釣れず、加えて波も荒くなってきたので撤収する。テントの前で夕飯の支度をしていると、近くに停まっていたマイクロバスを改造したキャンピングカーの家族のお父さんが話しかけてきた。僕と同じく釣りが大好きだという。趣味の話が弾む。後でキャンピングカーにお茶を飲みにおいで、と誘われたので、お言葉に甘えて、のこのことついていく。ついでに洗い物をさせてもらい、5日くらい洗っていない汚いクッカーとお別れした。キャンピングカーの中でおいしい紅茶をいただきながらいろいろな話を聞いた。Kingfishはこの先のNapier(ネイピア)までしか釣れないという。まあ、元々が暖かい海にすむ魚だから当たり前っちゃ当たり前なのだが、そんなに北限、じゃなかった南限がすぐそことは知らなんだ。まあ、また来年にでもNorth Islandの北の方に狙いに行けばいいさ、と思って、とりあえず、Napierまで少しずつ進むことを決めた。

 一つ面白い話を聞いた。NZでは海で魚釣りをする際、Berley Bomb(バーリーボム)という、ベイトをきざんで凍らせたものをロープで縛り、海中に放り込んで魚を集め、それにおびき寄せられたKingfishを釣るらしい。いわゆる撒き餌である。日本では撒き餌は基本的に餌釣りでしか使わないが、興味深いのはルアーフィッシングの際にも使うということだ。そのほかにも、ハンティングの話や、この先の釣りポイントを教えてくれ、いろいろなアドバイスをもらって話し込んでいるうちについつい長居してしまった。本当に素晴らしい時間であった。おやすみ。

   走行距離: 0km 計: 482km

 

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遠征で使用したルアーたち

脚注

(22)タックル:ロッド(釣り竿)、リール、ライン(釣り糸)など魚釣りの道具一式のことをいう。

(23)ペンシルベイト:トップウォータープラグの一種で単純な紡錘形をしたルアー。

(24)バット:竿尻のこと

(25)トラウトロッド:管理釣り場(マスを放流した池、川の釣り場)で使われるロッド。軟調の竿でよく曲がる。

(26)ドラグ:ラインの強度あるいはタックルの強度以上の負荷がかからないように、引く力がある限界値を超えると糸が出ていくようになっているリールの機構

(27)ポンピング:大型の重量のある魚に対して、竿で寄せる動作と竿を戻してリールで巻く動作を交互に行うこと

(28)根:沈んでいる岩

(29)ばれる:魚を逃すことを「ばらす」、「ばれる」という。

(30)ボイル:小魚が肉食魚に追われて水面を逃げ惑う、あるいは肉食魚がそれらを捕食する際に起きる水面の様子

(31)エギング:餌木という日本伝統のイカ釣り用のルアーでアオリイカコウイカヤリイカなどを狙う釣り方

(32)ライトショアジギング:ショアジギングより軽いルアー(20 ~40g)で中型の魚を狙う釣り方

 

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