べっさんのニュージーランド自転車旅行記

ニュージーランド走ってきました

DAY 14「腹の立つ出来事」

 

3/6  DAY 14  from Tokomaru Bay to Pouawa

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水平線に昇る朝日とともに出発

 とうとう2週間が過ぎた。朝は6時に起床し、日の出を待ちながら飯を食う。デザートにマンゴーまるごと1個をかぶりついて食べた(43)がなかなかの美味であったことを報告しておこう。尻の方から皮をむくときれいにむけることも発見したので諸君も時間があればやってみたまえ。

 水平線から一筋のオレンジ色の光が差し、1日の始まりを告げる。さあ、出発だ。Four Squareで食料を買い、昨日の子供たちが学校に行くところに出くわし、手を振りながら町を出る。今日も坂が多いが標準的な道だ。ただ、少し面白くないのは、景色が単純であること。草の生い茂るなだらかな丘が続き、牛や羊が草を食む風景を初めて見たときの感動は、今や宇宙の果てまで飛んで行ってしまった。それでも、歌を歌ったり、果物を食べてリフレッシュをはかったりしてTolaga Bay(トラガ・ベイ)に到着。ここには今は使われていないがNZで一番の長さ(600m)を持つWharf(ふ頭)があるそうだ。観光地にはあまり興味がない僕だがとりあえずは見ておこうとそちらに足を向ける。実は、本来今日はWharf周辺で泊るつもりだったし、実際、Wharfの根元にホリデーパークがあったのでここでもいいかな、と思っていた。その考えが変わったのはWharfの上でのある出来事がきっかけであった。そのことについてはまた後で話そう。

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斜面に羊の群れ

 Wharfはかなり長かった。もちろん自転車で乗り入れれば端まであっという間につくのだが。Wharfは全体がコンクリートでできていて、先端までは柵があり、その先は少し開けている。船の積み荷を運ぶためか線路が敷かれている。その線路が先端で分岐しているあたりも、趣がある。釣りをすることも可能で、遠浅ではあるが沖に近い分いくらか深くなっており、Kingfishの回遊も見込めそうだ。ただ、ここに着いたのは真昼間で、竿を出してみたものの、何も釣れなかった。地元っぽいお兄さんが3、40cmほどのサヨリに似た魚を釣っていた。Gisborne(ギズボーン)から遠足に来ているという子供たちが、メタルジグを投げている僕に興味津々だったので、これは日本の釣り方でショアジギングっていうんやで、と説明してあげた。と、ここまではなかなか楽しかったのであるが、ここで嫌なことが起こった。老夫婦と話をしていた時、僕が、学生なんでお金がなくて、こうしてキャンプしているんです、と話していると、ジジイの方が、お金がないのにどうやってNZに来れたんだ?と皮肉めいた言い方で尋ねてきたのだ。そりゃ、一生懸命バイトしましたわ、と言い返しそうになるのをこらえ、ちょっと意味が分からないなあ、ハハハ、とその場の空気をごまかしたが、かなり気分を害した。その後もジジイは自分の釣り道具をみて、まだ新品じゃないか、などと言う。新しくて悪かったな。今回の旅のためにそろえたんじゃ、はよどっか行け、とイライラオーラを出していると彼はようやく去っていった。

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Wharf

 そんなこともあり、後からホリデーパークの料金を見るとたったの2ドルだったのだが、やはりこの地を去りたいとの気持ちが強く、もう少し移動することに決めたのだ。ただ、このとき走行距離はすでに45km。次の町Gisborneに行くにはあと50km余りあり、遠すぎる。しかし、かといってその間に町らしい町があるかと言えばこれが全くない。Google Mapでは1つPouawa(ポウアワ)という地名が表示されているがちゃんとした町かどうかも怪しい。しかし、いかった頭では冷静な判断はできないもの。よく考えず出発してしまった。

 悪いことは続くものである。走り始めた途端、NZにきて初めて強い逆風にさらされる。そしてだらだらと続く上り坂。おまけにlogging truck(ロギングトラック)(44)が狭い路肩を走る僕を猛スピードで追い抜いてくる。思わず涙が出そうになる。しかし、それでも進まなければならない。ダメ押しに現れたのは舗装がはがされた砂利の道路(しかも登り)である。もはや、すべての運に見放された気分であった。

 それでも何とかPouawaに到着。町どころか何もない。キャンプエリアはあったが、水がない。終わった。水を補給してから来ればよかった。そんな基本的なことさえ忘れていたのだ。やはり、心の乱れは判断を鈍らせる。仕方なく、今日の晩飯はスープ抜きで、なるべく水を使わないようにする。残ったのは300mL。20km先のGisborneまで持つだろうか。いざとなれば、車を止めてもらうしかない。あ、明日のパンもないじゃないか。もうめちゃくちゃだ。

 それでも美しいビーチは僕の心を静めてくれる。飯を食って浜辺を散歩し、寝よう。明日のことは明日でいいのだ。

   走行距離: 77km 合計: 752km

 

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Wharf

脚注

(43)安価なマンゴー:NZではマンゴーをPeru(ペルー)などから輸入しており、その値段は1個あたり100~150円ほどである。マンゴー好きにとってはたまらない。

 

(44)logging truck:丸太を積んだ2両編成のトラック。車長はもちろん、車幅も大きく、追い抜きの際に強烈な風が巻き起こり、自転車にとって非常に危険である。ほかにstock truck(ストックトラック)という家畜を運ぶこちらも同じく2両編成のトラックがあるが、これはさらに悪臭が加わり、さらにカーブなどでは遠心力によって家畜の糞尿が路肩に排出されるので不快なこと極まりない。

 

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