べっさんのニュージーランド自転車旅行記

ニュージーランド走ってきました

DAY 19「2つのミッションと大きな出会い」

3/11  DAY 19  from Napier to Hastings

 明け方から雨が降り出し、しとしと降り続いている。ゴアテックスのレインコートで武装しているとはいえ、雨はやはり嫌いだ。テントの中で飯を食い、嫌々ながら準備をして出発。今日は小休止ということで隣町のHastings(ヘイスティングス)までの軽い道のりである。平野部なので道も平坦だし、昨日までの山岳コースに比べればなんてことはない。ただ一方で、こういった場所は農場ばかりで野宿できる場所がないのも事実。不安を胸にひたすら進む。あっという間にHastingsに到着。なかなかおしゃれな町である。町の真ん中を鉄道が走っており、アーケードには色とりどりの花が植わったプランターがぶら下がっている。今さらながら外国の町に来たという感じだ。

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Hastings の街並み(1)

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Hastings の街並み(2)

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Hastings の街並み(3)

 今日は進まない代わりに、2つのミッションがあった。1つは眼鏡を買うこと。2つ目はWi-Fiをゲットすることだ。とりあえずそこら辺のおっちゃんに眼鏡屋さんがあるか聞く。すると、この通りを真直ぐ行って4ブロック先の角にSpecsaver(スペックセイバー)という名の店があると教えてくれた。そこに行って、外から覗いてみると結構な値段であるが、100ドル以内のものもある。中のきれいなお姉さんに事情を説明し(爆笑していた)、眼鏡を買いたいが、そう長くは一か所にいられないと伝える。するとここで問題が起こった。医師の処方箋が必要だと言われたのだ。ちなみに日本では、子供は処方箋が必要だが、大人はその場で作ることができる。NZでは眼鏡を作るのに処方箋がいるのか?(50) そうなると余分な費用がかかることになるし、いくら取られるかもわからない。お姉さんは、とりあえずお医者さんに行って処方箋をもらってくるのよ、その後はあなたの行く先の店で受け取ることができるわ、と言ったが、僕はもうあきらめの方向に入っていた。やっぱりやめときます、と断り店を出て、残りの数10日間この眼鏡を守り抜くことを誓ったのだ。

 次のミッションはWi-Fiだ。Carl’s Jr(カールズジュニア)というファストフード店Wi-Fiを開店前から使い倒す。(ただし、後でちゃんとポテトを買ったことも付け加えておく)  Wi-Fiにつないでさまざまなタスクをこなすのだが、肝心の、3月になって発表された大学の成績を見るのを忘れていた。単位は回収できているだろうか、心配だ。まあ、いつ見ようとも結果は変わらないのでいいか。

 そんなこんなでミッションの達成度は2分の1に終わったが、これからHastings近郊で泊れるところを探す。が、ない。Paki Paki(パキパキ)という、町のはずれのところに来ても見つからない。これはまずいと、少し逆戻りになるが、Havelock North(ハブロックノース)の方向へ向かう。しかし、こちらも農場ばかりで望み薄だ。と、その中に1か所だけ、スポーツグラウンドのような施設を見つけた。私有地ではなさそうなので、入ってみると、なんとCampground(キャンプ場)と書いてあるではないか。これはついてると心が躍るが、どうも様子がおかしい。人がいないのだ。敷地内のガラス張りの建物に近づいてみると、Riverbend Bible Church(リバーベンド・バイブル・チャーチ)とある。とすると、ここは教会か。とりあえずトイレに行きたかったので、トイレを借りようと裏手の方に回ると、掃除をしている若い女性がいた。ここはキャンプ場なんですか、と尋ねると、そうだと言い、お金はいくらするのかと聞くとわからない、私はただ掃除をしているだけなのと言う。なんとも頼りない。

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Omega plum(オメガプラム) 酸味と甘味のバランスが良くプラム系の中で個人的に一番好きだった

 よくわからないが、とりあえずテントを干して他の人が来るのを教会の玄関で待った。すると、しばらくして、黄色いレインコートを着たやせ型のやさしそうなおじさんがやってきた。ここの施設はChurch Camp(チャーチキャンプ)と言って、学校などの団体が大人数で予約して利用するような場所だと説明してくれた。彼はその仕事に携わっているというが、そのような場所であるので、本来は個人で泊るということはできない。しかし、今回は特別に、また同じように他の人が入ってこないように外から見えないところにテントを張ってくれさえすれば、泊ってもいいと言ってくれた。そのほかにシャワーも使ってよいという。心からお礼を言った。

 それからしばらくして雨はやみ、青空が見え始めた。テントも寝袋もすっかり乾き、さっきまでの危機的状況は何だったのかというような平和な時間である。そして、夕方、そろそろ飯にしようかと思っていた時である。彼が敷地の中にある家に来て、お茶を一緒に飲まないか、と誘ってきた。こういう時に遠慮をしてはいけない。2つ返事で出向き、家に入ると、彼の友人が続々と集まってきた。お茶と聞いてきたが、がっつり夕食の準備がなされ、卓上には彼の奥さんの手料理がずらりと並んでいる。ずっとほぼ缶詰の食生活をしてきた僕にとっては、もうたまらない。遠慮という遠慮を捨て去り、ナイフとフォークという慣れない作法にも関わらず、次から次へとがっつく。チキン、ポテトサラダ、リーフサラダ、ハム、サラミ、ビーフハム、ジャガバター、そしてバターを塗ったパン。どれもおいしいという形容詞のほかに表現のしようがない。デザートにはアイスクリームとチョコレートプディング。冷たいアイスと熱々のプディングを混ぜ合わせて食べると、これがもうたまらない。久しぶりに満腹になったお腹をさすりながら、重ねて感謝申し上げる。

 食後、彼はHastingsの別の教会に行くという。せっかくの機会だからついていくかと聞かれ、これまためったにない機会とばかりにのこのことついていく。実は、教会などに行くのは初めてなので、漠然と厳かな儀式を想像していたのだが、実際は少しばかり異なっていた。(51) 男の人が前でギターを弾きながら、みんなで神をたたえる歌を歌い(確かHow Great Is Our God(ハウ・グレート・イズ・アワ・ゴッド))、牧師さんの話をみんなで頷きながら聞き入る。この集会を通して、彼らがいかに敬虔なキリスト教徒であるかを痛感した。

 集会が終わり、家に帰ると、時刻は夜の9時。あたりはすでに暗くなっていたが、家でお茶を飲み、クッキーをかじりながら、今後のルートを一緒に調べてくれた。そして、テントに戻るとき、明日の朝食もおいでという。もちろんと答え、おやすみの言葉を交わして別れた。

   走行距離: 33km 計: 1039km

 

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旅の間中ですっかり脂肪が落ちて引き締まった体。痩せたい人は自転車旅に出ることをお勧めする

脚注

#NZはイギリス系の英語であるので、日本でいわゆる標準とされているアメリカ英語と単語の使われ方が少し異なる。たとえばelevatorはliftというし、glassesはspectaclesという。

 

(50)メガネの買い方:これは後になって間違いと分かった。日本の眼鏡販売店と違ってその場では視力を測定できないため、医者に行く必要があったのだ。自分の眼鏡の度数は知っていたので、そのことを伝えればよかったのだが…

 

(51)キリスト教の集会:ただし、これはプロテスタント系の集会であるので、カトリック系や、他の宗派の集会についてはまた異なった形式かもしれない。

 

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