べっさんのニュージーランド自転車旅行記

ニュージーランド走ってきました

DAY 15「黄色いのにオレンジ」

3/7  DAY 15  from Pouawa to Wharareta

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朝焼けが美しい

 昨日はよく眠れなかった。1つは波の音。砂浜に打ち寄せる波の音を聞きながら眠れるなんてロマンチックだなぁなどと言っている場合ではない。Aucklandを出てこの方ずっとPacific Coast(太平洋沿岸)を走ってきているのだが、波の音、それも砂浜の場合はえげつない騒音公害である。その決して静かとは言えない一昔前のブラウン管テレビがザーっと鳴るような音を一晩中聞かされるのである。もう1つはテントを張っていた横の道路の舗装が丁度はがされていたことである。そこを車が通ると砂利を踏む音がするのだ。車の音は夜になれば止むと思っていた。が、甘かった。logging truckは深夜でも走るのだ。しかも交通量の少ない夜間を狙ってか、列をなしてやってくる。

 というわけで、結局、昨夜の僕に安眠がもたらされることはなかった。しかし、相変わらず朝の空は美しい。きれいな朝焼けを拝んで、よく眠らなかったことも忘れ、気持ちよく出発する。ただ、朝飯をろくに食っていないので空腹である。すると30分ほど行ったところにtake away(持ち帰りの店)を発見。店の名前を見るのも忘れるほど夢中で飛び込む。フレンチフライを買い、外の机で食べて再び出発。途中、無人販売で、2ドルで袋いっぱいのリンゴを買ったがどう見ても10数個は入っている。とりあえず2個かじりつくがこれがまたおいしいのなんの。

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オットセイ…かな?

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ペンギン?ウミガラス

 そうこうしているうちに、Gisborne近郊までやってきたようで、一気に周りの景色が町らしくなってきた。Super Valueで20ドルの買い物をし、これは少しばかり買いすぎたと反省。そうそう、街に来たから洗濯をしなければならない。幸い、すぐにコインランドリーが見つかった。中に入ってみると、ドラム式の新式の洗濯機に洗剤が付いていて、しかも1ドル、2ドル硬貨がそのまま使える仕様である。やはり前のコインランドリーは旧式だったようだ。洗濯が終わるのを待ちながら、コインランドリーの床で筋トレをする。変態である。

 洗濯を終えて出発するとすぐにGisborneに入った。City Centreに行くかどうか迷ったが、特に用はないので海沿いの道に入り、かつて、この地を発見したCaptain James Cook(クック船長)の銅像と、彼の探検隊が初めて上陸したとされるYoung Nicks Head(ヤングニック岬)を拝んでGisborneを後にする。と、今日もまた失敗をした。水を補給するのをまた忘れていたのだ。2日連続で何たる失態。行けども行けども水はない。しかも55kmを過ぎたあたりで山道になり、これがまた長い。

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道端にあるスピードメーター。取り締まるより、こっちの方がドライバーに直接的でいいんじゃないか

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Captain James Cook

 ここで、この旅で間違いないく一番といえるような難所にさしかかった。new seal(新しい舗装)である。NZの舗装の仕方は日本とはかなり異なるようで、本当のところはどうかわからないが、見たところ、アスファルトと砂利を撒き、その上を車に通らせて踏み固めさせるというラフなスタイルのようだ。このとき、余計な砂利が路上に残るのだが、これがまた厄介である。通る車が砂利を弾き飛ばすのだ。しかも砂利にはアスファルトがべったりくっついていて、自転車のタイヤに、まるでフライの衣のようにまとわりつき、それはもう大変なことになる。坂道である上にこんな路面ではとても自転車に乗っていられないため、仕方なく自転車を降りて歩くが、当然靴の方にもアスファルトと砂利がくっついてくるのだ。そんな悪路をベタベタ一歩ずつ歩く。時折、通る車が砂利を弾き飛ばし、そむけた背中に容赦なく当たる。結構痛い。

ここから先の記憶は結構あいまいだが、さんざん英語で悪態をつきながらこの難所を抜け出したようで、気づけば峠の展望スポット的な所のベンチで力尽きていた。ここがなかなか良さそうなので、今夜はここに泊ることにした。さて、問題は水だ。運のいいことに、この展望スポットは車が入ってきやすい形になっている。最初に声をかけた青年は1Lほどの水をくれた。もう少し欲しいなと思い、今度は老夫婦にお願いしてみるとなんとペットボトル1.5Lをそのままくれたのだ。本当に感謝感謝である。すぐさま飯にして、お腹いっぱいになった腹をさすりながら、荷物の整理をしていると、バンに乗った女性が3つオレンジをくれた。それは黄色いオレンジだったがNZでは結構メジャーらしい。僕が黄色いのに、「オレンジ」なんやなあ、と冗談を言うと豪快に笑ってくれた。

次に一人の髪の長い男が声をかけてきた。互いに自己紹介をする。彼の奥さんは日本人だという。彼はその時は車に乗っていたが、自転車旅行が好きで、日本も九州から京都あたりまで旅をしたことがあるという。彼はウォッカのジュース割りを勧めてきたが、NZでは野外での飲酒は禁じられている。トロピカルジュースだけありがたくいただく。すると、また車が止まり、今度はアジア系の人が3人出てきた。その雰囲気からして、もしや日本人では、と思ったとき、彼がその3人にその質問をした。やはり、日本人だった。squash(かぼちゃ)(45)を買い付けに来ているらしい。この旅2回目の同郷の者との出会いである。実に2週間ぶりに日本語を話すが、ウォッカの彼とは英語で、片や日本人の3人とは日本語で話すので骨が折れる。別れ際、彼らはリンゴを山ほどくれた。朝大量購入したばかりなので、いささかタイミングが悪いが、折角の好意なのでありがたくいただく。そして、みんな別れの挨拶をし、僕は床に就く。いやいや、今日は山あり谷ありだなあ。

   走行距離:63km 計:816km

 

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黄色い「オレンジ」

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リンゴももらった

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峠の休憩所。ここでいろんな人に出会った

脚注

(45)squash:かぼちゃの英訳はpumpkin(パンプキン)だと思うだろうが、これはHalloween(ハロウィン)などでよく見かけるオレンジ色のかぼちゃのことを指し、緑色のかぼちゃは別にsquashと呼ぶ。

 

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DAY 14「腹の立つ出来事」

 

3/6  DAY 14  from Tokomaru Bay to Pouawa

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水平線に昇る朝日とともに出発

 とうとう2週間が過ぎた。朝は6時に起床し、日の出を待ちながら飯を食う。デザートにマンゴーまるごと1個をかぶりついて食べた(43)がなかなかの美味であったことを報告しておこう。尻の方から皮をむくときれいにむけることも発見したので諸君も時間があればやってみたまえ。

 水平線から一筋のオレンジ色の光が差し、1日の始まりを告げる。さあ、出発だ。Four Squareで食料を買い、昨日の子供たちが学校に行くところに出くわし、手を振りながら町を出る。今日も坂が多いが標準的な道だ。ただ、少し面白くないのは、景色が単純であること。草の生い茂るなだらかな丘が続き、牛や羊が草を食む風景を初めて見たときの感動は、今や宇宙の果てまで飛んで行ってしまった。それでも、歌を歌ったり、果物を食べてリフレッシュをはかったりしてTolaga Bay(トラガ・ベイ)に到着。ここには今は使われていないがNZで一番の長さ(600m)を持つWharf(ふ頭)があるそうだ。観光地にはあまり興味がない僕だがとりあえずは見ておこうとそちらに足を向ける。実は、本来今日はWharf周辺で泊るつもりだったし、実際、Wharfの根元にホリデーパークがあったのでここでもいいかな、と思っていた。その考えが変わったのはWharfの上でのある出来事がきっかけであった。そのことについてはまた後で話そう。

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斜面に羊の群れ

 Wharfはかなり長かった。もちろん自転車で乗り入れれば端まであっという間につくのだが。Wharfは全体がコンクリートでできていて、先端までは柵があり、その先は少し開けている。船の積み荷を運ぶためか線路が敷かれている。その線路が先端で分岐しているあたりも、趣がある。釣りをすることも可能で、遠浅ではあるが沖に近い分いくらか深くなっており、Kingfishの回遊も見込めそうだ。ただ、ここに着いたのは真昼間で、竿を出してみたものの、何も釣れなかった。地元っぽいお兄さんが3、40cmほどのサヨリに似た魚を釣っていた。Gisborne(ギズボーン)から遠足に来ているという子供たちが、メタルジグを投げている僕に興味津々だったので、これは日本の釣り方でショアジギングっていうんやで、と説明してあげた。と、ここまではなかなか楽しかったのであるが、ここで嫌なことが起こった。老夫婦と話をしていた時、僕が、学生なんでお金がなくて、こうしてキャンプしているんです、と話していると、ジジイの方が、お金がないのにどうやってNZに来れたんだ?と皮肉めいた言い方で尋ねてきたのだ。そりゃ、一生懸命バイトしましたわ、と言い返しそうになるのをこらえ、ちょっと意味が分からないなあ、ハハハ、とその場の空気をごまかしたが、かなり気分を害した。その後もジジイは自分の釣り道具をみて、まだ新品じゃないか、などと言う。新しくて悪かったな。今回の旅のためにそろえたんじゃ、はよどっか行け、とイライラオーラを出していると彼はようやく去っていった。

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Wharf

 そんなこともあり、後からホリデーパークの料金を見るとたったの2ドルだったのだが、やはりこの地を去りたいとの気持ちが強く、もう少し移動することに決めたのだ。ただ、このとき走行距離はすでに45km。次の町Gisborneに行くにはあと50km余りあり、遠すぎる。しかし、かといってその間に町らしい町があるかと言えばこれが全くない。Google Mapでは1つPouawa(ポウアワ)という地名が表示されているがちゃんとした町かどうかも怪しい。しかし、いかった頭では冷静な判断はできないもの。よく考えず出発してしまった。

 悪いことは続くものである。走り始めた途端、NZにきて初めて強い逆風にさらされる。そしてだらだらと続く上り坂。おまけにlogging truck(ロギングトラック)(44)が狭い路肩を走る僕を猛スピードで追い抜いてくる。思わず涙が出そうになる。しかし、それでも進まなければならない。ダメ押しに現れたのは舗装がはがされた砂利の道路(しかも登り)である。もはや、すべての運に見放された気分であった。

 それでも何とかPouawaに到着。町どころか何もない。キャンプエリアはあったが、水がない。終わった。水を補給してから来ればよかった。そんな基本的なことさえ忘れていたのだ。やはり、心の乱れは判断を鈍らせる。仕方なく、今日の晩飯はスープ抜きで、なるべく水を使わないようにする。残ったのは300mL。20km先のGisborneまで持つだろうか。いざとなれば、車を止めてもらうしかない。あ、明日のパンもないじゃないか。もうめちゃくちゃだ。

 それでも美しいビーチは僕の心を静めてくれる。飯を食って浜辺を散歩し、寝よう。明日のことは明日でいいのだ。

   走行距離: 77km 合計: 752km

 

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Wharf

脚注

(43)安価なマンゴー:NZではマンゴーをPeru(ペルー)などから輸入しており、その値段は1個あたり100~150円ほどである。マンゴー好きにとってはたまらない。

 

(44)logging truck:丸太を積んだ2両編成のトラック。車長はもちろん、車幅も大きく、追い抜きの際に強烈な風が巻き起こり、自転車にとって非常に危険である。ほかにstock truck(ストックトラック)という家畜を運ぶこちらも同じく2両編成のトラックがあるが、これはさらに悪臭が加わり、さらにカーブなどでは遠心力によって家畜の糞尿が路肩に排出されるので不快なこと極まりない。

 

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DAY 13「TOEIC800点」

3/5  DAY 13  from Tikitiki to Tokomaru Bay

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夜中にテントに入ってきたセミ。野宿は自然と隣り合わせである

 朝方の3時ぐらいだろうか。昨日寝る前にトイレに行こうと思いながら行かなかったのが悪かったのか、また目が覚めてしまった。が、外に出ると雲一つない満点の星空。時折流れ星がスッと流れては消える。今日は暑くなるぞと思いつつ再び寝袋に潜る。起きたのは夜も白み始めた6時だった。最後にBarのお母さんに水をもらい、丁寧にお礼を言って出発。朝日を背に受け長い影が道路に伸びる。

今日の道は昨日に比べれば標準的な道である。メインの道から数キロほど外れているが少し大きな町Ruatoria(ルアトリア)のFour Squareで大量の果物(最近不足していた)と、切れていた粉末スープを購入して、だらだらと平坦路を走っていた時だった。前方から自分がやってくるではないか。いや、そんなはずはない。自分と同じ自転車旅行者(42)だ。彼は大きく手を振りながら自分の元へやってくる。そして自己紹介が始まった。彼はSouth IslandのNelson(ネルソン)に住んでいたが、自転車旅行が好きすぎて3週間前に仕事を辞めてきたという。そんなことをさらっというものだからあきれて何も言えない。そして君は英語が上手だねと褒めてくれた後、Christchurchの地震は知っているかと聞く。大きい地震で崖が崩れて主要道路が通行止めになっているらしい。山火事で通行止めになったと聞いていたが地震が原因なのか。Wi-Fiがないことにはそうした情報を得ることができない。彼に迂回ルートやその他おすすめの場所を教えてもらった。自転車旅行ではないが日本に行ったことがあるらしく、日本では飯はうまいし、人はやさしいし、何よりもどこでも野宿できるから最高だねと言っていた。

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朝日を受けてきらめく川

かれこれ40分ほど路肩で話し合った後、別れを告げそれぞれの目的地に向けペダルを踏む。途中のTe Puia Springs(テ・プイア・スプリングス)に到着したときにはもうすでに40kmほど来ていたのでここで泊ってもよかったのだが、キャンプに適したところが見つからない。次の町Tokomaru Bay(トコマル・ベイ)まで頑張る。すると、街に入ってすぐ美しいビーチとエメラルドグリーンの海が広がり、なんとその目の前がキャンプ場になっているではないか。とても素晴らしいところだ。迷わずここに泊ることにして、木陰のベンチで昼寝をして旅の疲れをとる。夕方近くになって近くのFour Squareで明日のパンを買い、夕飯の支度をしていると、中学生くらいの地元の子供が近づいてきた。最初は一人だったが気づけば次々と集まり、どこから来たの、どこに行くの、何してるの、これは何、と質問攻めにあう。(その余りの勢いに混乱して、誤ってまだ熱いストーブの五徳に触ってしまいやけどをした) こちらの英語力に気を遣ってくれる大人と違い、子供は容赦がない。えげつないスピードで話しかけ、好き放題に喋りまくる。だが、耳が慣れると意外にも彼らの言っていることがわかるようになるものだ。今、TOEICでも受ければ800点は取れそうである。それから彼らは僕のFacebookのアカウントを半ば強引に聞き出しリクエストを送る。Wi-Fiにつなぐまでは承認できないが、まあ仕方ない。みんなの名前をメモ帳に書かせ、名前を覚えようとするのだがなんせ十数人もいるのでなかなか覚えきれない。彼らの話を傍らで聞きながら飯を食い、なかなか楽しいひと時であった。

   走行距離: 60km 計: 615km

 

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Tokomaru Bay

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木陰のベンチでのんびり

脚注

(42)自転車旅行者:彼のほかにもNZを自転車で回る旅行者はたくさんいる。海外からでは、特にオランダなどの欧州からが多い。

 

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DAY 12「死にそうな山岳コースとちょっとのホームシック」

3/4  DAY 12  from Hicks Bay to Tikitiki

 朝、目覚めると、空はもうすでに明るかった。朝7時。朝間詰めを逃したが昨日の晩からかなりの強風が吹いており、どのみちプラグは投げられそうになかったのでまあいい。そういえば昨日の晩自然の呼び声で外に出ると満点の星空で、思わず見とれてしまった。天の河がとてもきれいに見え、それはもう美しかった。

 ということで今日はスロースタート。飯を食って小物を釣る。相変わらずササノハベラっぽい奴が釣れる。時折、大きな魚が浅場にベイトを追い込んでいるのが見えるので小型のミノーを投げ込んで反応を期待する。チェイスはあるがバイトに持ち込めないのは僕の力量不足である。

 そうこうしているうちに出発の時間になり、結果Hicks BayでKingfishをキャッチすることはかなわなかった。もっとも後半はまともに釣りをしていなかったのだが。General Storeでモバイルバッテリーを回収し、出発。今日はまた一段と増して山岳コースである。いや、まじで死ぬかと思った。まるであえて山の険しいところを選んで作られたかのような道路に、悪態をつきながらも、何とかTikitiki(ティキティキ)に到着した。Tikitikiは海から少し離れた川辺の村で、あたりには牧場が広がっている。こういうところにはキャンプのできるところは少ない。12日目だし、そろそろ宿に泊まってもよいと思うのだが、Motel(モーテル)(39)B&B(ベッド・アンド・ブレックファスト)(40)も、Backpackers(バックパッカーズ)(41)も見つからない。どうしようかと、Postoffice兼Bar(バー)の前で途方に暮れていると、中からビール箱を抱えて出てきたおっさんが、中の人に頼んでみたらというので、ダメ元で聞いてみるとこれが正解だった。なんと庭にテントを張らせてくれるというのだ。しかもシャワーも浴びていいという。1週間ぶりのシャワーにありがたい限りである。

 Barはなかなか雰囲気のいい店だ。貧乏人ながら2.50ドルの炭酸飲料を買って宿代代わりとする。汚れたクッカーも洗わせてもらった。

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Te Araroa(テ・アラロア)の Four Square では生きた 2 枚貝が売っていた

 さて、1か月ちょっとの旅もいよいよ中盤に入るわけだが、ここにきてなんとなくホームシック気味である。まあ、初めての長期間の海外滞在で、しかも野宿をするわけだから、ホームシックにならない方がおかしいと思うが、新しい世界での新鮮味を味わう期間から抜け出た頃ということだろう。ホームシックといっても帰宅願望が切実にあるわけではなく、ただ、なんとなく、ああ、日本に帰ったら熱々の風呂に入れるなあ、とか、お布団の上で寝られるよなあとかいうことをふっと考えてしみじみとなる感じである。まあ、こんな感じもあと1週間もたてば消えるだろう。なんせ帰りの飛行機は3/29と決まっているのだし(変更するとなれば3万円ほどの損失が出るし、乗り継ぎの条件も悪くなるかもしれない)、そのうちChristchurchのホテルもとる予定だから、非常時を除きこの旅程は変えられないのだ。いろいろ考えても無駄ということである。それでは、明日に備え、寝ることにしよう。

   走行距離: 45km 計: 615km

 

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ウォーターシューズを片足どこかに落としてきてしまったようである。気に入っていたのに…

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Tikitiki の教会の門。マオリの文化との融合が見られる

脚注

(39)Motel:車で旅行をする人のためのホテル

 

(40)Bed & Breakfast:素泊まり+朝食付きのホテル

 

(41)Backpackers:Backpacker(バックパック1つで旅をする人)などが泊る共同宿

 

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DAY 11「Kahawaiの味は普通」

3/3  DAY 11  at Hicks Bay

 今日は6:00に起床し、朝飯を食べて出撃。Onepoto Rocksには先行者が数人いたが、いずれも餌釣りのようだ。こちらではショアからルアーで魚を狙うという概念はないらしい。彼らは時折Kahawaiを釣りあげている。こちらも投げ始めるが、ベイトはいるのになかなか活性が上がらない。先行者のお兄さんに釣り上げたKahawaiを見せてもらうときに、ルアーでも釣れるか聞いてみたところ、少し小さめのルアーなら釣れるとのこと。ならばと40gのメタルジグに変えてみる。餌釣りの様子を見ていると底べったりで釣っているのがわかる。ということは底付近を探ればいいのだなと考え、ショートジャーク(37)を5回、カーブフォール(38)の組み合わせを試す。すると2投目にしてさっそく答えが返ってきた。大きさのわりにかなりの引きを見せたのは50cmほどのKahawai。これがNZ初の魚となった。しかし、このとき午前9時。一瞬キープするかリリースするか迷ったが、2回目の朝ご飯だと、魚をしめ、血抜きをしてさばく。塩と胡椒を振り、フライパンで焼いて食べた感想は、普通。釣りあげて間もないせいか、特徴のない味である。強いて言うならアジに近いかもしれない。あ、決してまずいと言っているわけではないので注意してもらいたい。“普通”においしいのである。ともかくも海の恵みに感謝である。

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Kahawai

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釣った魚を磯でさばいてキャンプ地に持ち帰る

 食べ終わって一服をしたのちに、General Storeに赴き、食料を買うついでに携帯の充電をさせてもらえないか聞いてみたところ、2ドルは必要だが、させてもらえるらしい。どうせならと、でかいモバイルバッテリーを預け、明日取りに行くことにした。その時の店のおっちゃんがWharfには行ったのかと聞くので、行ってないと答えると、絶対に行った方がいいで、と言われたので、今のキャンプ地から少し移動してWharfに移ってみると、なるほど魚影の濃さは今までのどこよりも優れている。これは移動して正解だった。ショアジギをする傍ら、小物釣りを試してみる。すると、ササノハベラによく似たやつが釣れた。ほかにはスズメダイのような魚。Trevally(シマアジ)の幼魚、メッキ(ロウニンアジの幼魚)、チャリコ(マダイの幼魚)などが次々にかかる。すっかり夢中になり、気づけば夕方。Kahawaiを釣りに来ていたおばあちゃん(実はWharfの持ち主だったことが後で判明する)と語り、その孫と犬が周りでじゃれあい、ゆったりとした時間が流れる。後半はほぼ釣りをしていないがそれでも僕は満足していた。そうこうしているうちに夜が迫ってきたので、飯を食って寝た。

   走行距離: 5km 計: 571km

 

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WarfからHicks Bayを見渡す

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ササノハベラに似た魚(1)

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ササノハベラに似た魚(2)

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謎の魚

脚注

(37)ショートジャーク:細かいしゃくり

 

(38)フォールの仕方:ルアーの沈め方には2種類あり、ラインの出をフリーにして落とすフリーフォールと、ラインのテンションを保ったまま落とすカーブフォール(テンションフォール)がある。後者の方が水の粘性の影響をより強く受けるため、沈下速度が遅くなる。

 

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DAY 10「激アツポイントへ」

3/2  DAY 10  from Waihau Bay to Hicks Bay

 朝起きて、唐突にHicks Bayまで行くと決めた。店で買い物をして出発する。今までは細かいアップダウンが多めだったが、今日はやや長めのだらだらした坂道が続くのでなかなかタフである。最近お菓子を食べるのにはまっていて糖尿病まっしぐらな予感なのだが、坂道を登りきるたびにChit Chat(チット・チャット)(33)を2枚ずつ食べると決める。まるで餌につられる動物か何かのように目の前の坂と格闘し、何とか昼までにHicks Bayに到着。見た感じは期待していたよりかは普通の風景で、広い砂浜と少々の磯が見えるだけである。

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Maori(マオリ)の集会所、Marae(マラエ)。 一般の人が無断で立ち入ることはおろか、写真を撮ることも制限されている

とりあえず道端で昼飯を食う。するとハエが群れをなしてやってきた。あのエメラルド色に輝くやつである。Sandflyだけでも十分うっとうしいのに、ハエが参戦するとなるともう落ち着いて飯を食うどころではない。早々に食べ終えてその場を退散し、近くのPost office(郵便局)兼General store(34)に入る。食料を買うついでにKingfishのポイントを聞いてみた。教えてくれたのは2つ。1つはOld Wharf(古桟橋)で、湾の橋の方にある。そしてもう1つはOnepoto Rocks(オネポト・ロック)という名の磯だ。こちらは湾の少し奥まったところにある。

とりあえず近い方のOnepoto Rocksに行ってみると、相変わらず浅いものの、底は砂地で根も少なく、前回のTe Kahaよりは釣りやすそうである。とりあえず今日の夕方と明日の朝はここでやると決めて、近くの林の木の下にテントを張り昼寝をする。夕方から出撃する。

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Onepoto Rocks

5時頃から釣り始めるが気配がない。少し投げては休み、海を観察する。と、6時過ぎだっただろうか。ペンシルベイトの数十cm横でミスバイト(35)。おっと思っているうちに時合(じあい)(36)になったらしく少し沖の離れ磯の際でボイル。ぎりぎり届く範囲だ。慎重にボイルのあったところに投げ込もうとするが少し右にずれてしまった。こうした微妙なずれでも魚の反応は全く違うものだ。やはり反応してくれない。

水面が活性化したのも一瞬で、海は再び静まり返ってしまった。一度だけ足元まで魚が追いかけてきたが、Kingfishではなく、茶色の体で黒い尾をした40、50cmくらいの魚だった。7時過ぎに上がり、飯を食って寝る。明日もHicks BayでKingfishを狙う。

   走行距離: 49km 計: 566km

 

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朝の訪れ。何度見ても美しい

脚注

(33)お菓子:NZでは大きく分けて2つの製菓会社がシェアを占めている。1つはAustralia(オーストラリア)のArnott’s(アーノット)、もう1つはNZのGriffin’s(グリフィン)であり、どちらも150年以上続く老舗である。お互いをライバル視してか、同じような商品を違う名前で売り出している。Chit Chatは日本でもおなじみのTim Tam(ティムタム)と類似したチョコレートビスケットである。

 

(34)郵便局とゼネラルストア:この辺りではこの2つが同じ建物になっていることがほとんどである。

 

(35)ミスバイト:魚が食い逃すこと

 

(36)時合い:魚の捕食スイッチが入るタイミング。潮位をはじめにさまざまな要因が組み合わさるため、その時間を予測することは難しい。

 

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DAY 9「圏外でもおシャンティ」

3/1  DAY 9  from Te Kaha to Waihau Bay

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One lane bridge(一方通行の橋)では優先される方向が決まっており、反対方向から来た車は他方に道を譲らなければならない

 朝も相変わらず波が高く、それでもギリギリまで粘ったが駄目だった。ベイトも昨日よりはやや少なかったように思う。昨日お世話になったキャンピングカーのファミリーが先に出発し、お礼を言って別れる。旅は一期一会なのだ。自分もテントを片付けて出発。今日もアップダウンの激しい道が続く。最近はかなりの田舎道を行っているので携帯の電波が圏外になることが多い。そんな場所に人が住んでいるから驚きだ。(地元の人ではないが、通りすがりの人が言うには、彼らは固定電話を使い、携帯はもっぱらWi-Fiに接続して使うだけなのだという)

 もう一つ困ったことがある。店が全然ないのだ。食料が底を尽きそうなので一刻も早く補給したいのだが、一向に見つからない。結局、今日の目的地であるWaihau Bay(ワイハウ・ベイ)まで一つの店も見ないまま到着してしまった。

 Waihau Bayは桟橋とボートの降ろし場があり、海のレジャーを楽しむ人たちのアクセスポイントらしい。桟橋の前に雰囲気の良いWaihau Bay Lodge(ワイハウ・ベイ・ロッジ)があり、一階のバルコニーのレストランで宿泊客がディナーを楽しんでいてとても洒落た場所である。(圏外だが) 今日の寝場所は道路から少し離れており、今晩は熟睡できそうだ。Kingfishが入ってきそうなポイントはなかったが、夕方少しエギングとかを試してみた。もちろん何も釣れなかった。明日は近場にいいところがあればそこに移動する。あるいは大きく移動してHicks Bay(ヒックス・ベイ)に向かうかもしれない。Hicks Bayはキャンピングカーのお父さんイチ押しのポイントで期待が持てる。

   走行距離: 35km 計: 517km

 

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55kmカーブ(まだ飛ばせる範囲)

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海岸線に沿って美しい曲線を描いた道

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Waihau Bay

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